⑫不動産の売却と税について
Q 不動産を売却した時の申告と納税はいつするのでしょうか?
A 不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に他の所得と一緒に所得税の確定申告をし、所得税を納税します(不動産の売却益に対する税率等は他の所得と分離して計算されますが、申告と納税は他の所得とあわせて行います)。住民税の納税については、確定申告をすれば、税務署から市区町村に連絡が回り、6月頃に市区町村から住民税の納付書が届きますので、その納付書により納付します。
Q 不動産の売却金額から差し引く取得費は購入した時の金額全額でしょうか?
A 売却金額から差し引く取得費には、売却した土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。
しかし、建物の場合には、その建物の建築代金や購入代金などの合計額がそのまま取得費になるわけではありません。建物は使用したり、期間が経過することによって価値が減少していきます。したがって、建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から減価償却費相当額(価値の減少部分)を差し引いて計算する必要があります。
Q 相続した不動産を売却しましたが、取得費は相続時の相続税評価額でしょうか?
A 相続により取得した不動産については、お亡くなりになられた方が取得した価額を引き継ぐことになります。
不動産の場合には、購入時の売買契約書があれば、購入対価を取得費とすることができますが、取得価額が不明な場合には売却代金の5%を取得費として計算することになります。
Q 売却した不動産の取得した時の価格が不明な場合の取得費はどうなりますか?
A 売却金額の5%が取得費としてみなされます。
したがって、諸経費等を考慮しなければ、残りの95%が売却益となり、課税の対象となります。
また、実際の取得費がわかっている場合でも、売却金額の5%の金額の方が有利となるのであれば、実際の取得費を使わず、この金額を取得費とすることができます。
Q 譲渡費用として控除できるものについては、どのようなものがありますか?
A 譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用をいい、主なものは次のとおりです。
(1)売却時の仲介手数料
(2)売却時の契約書の印紙代
(3)売却時の登記費用
(4)売却のために行った測量費、不動産鑑定料
(5)貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
(6)土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
ただし、修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用などは譲渡費用から除かれます。
Q 相続した不動産を売却した時は税の優遇はありますか?
A 相続した不動産を相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却した場合には、納めた相続税の一部が取得費として算入できる特例(取得費加算の特例)があります。この特例を適用するためには、申告が必要となります。
Q 自宅を売却した時は税の優遇はありますか?
A 自分が住んでいた居住用財産(マイホーム)を売却したときは、所有期間の長短に関係なく売却益から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例といいます。
さらに、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除を使ってもまだ売却益がある場合は、売却した年の1月1日において売却した家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていれば、通常の場合よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。ただし、これらの特例は、マイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないことが条件となります。
Q 売却した不動産の所有期間はいつの時点で判定するのでしょうか?
A 不動産の譲渡所得の所有期間の判定は、単純に「取得の日」から「譲渡の日」までの期間で判定するのではなく、「取得の日」から「譲渡の日」の属する年の1月1日現在の所有期間で判定します。