⑦遺言について
Q 誰でも遺言を書くことができるのですか?
A 原則として誰でも遺言を作成できますが、遺言を作成するためには、自分が書く遺言の「内容」と、その結果生じる「効力」を正しく理解できる意思能力(これを遺言能力といいます)が必要となり、このため法律で、遺言を書くことが出来る人に一定のルールがあります。
例えば、15歳未満の未成年者については、遺言を書くことはできません。また、成年後見人が選任されている場合、成年被後見人が遺言を書くためには、一時的に判断能力が回復した際に、医師二人以上の立会がなければならない、というルールが決められています。
Q 夫婦に子供がいないのですが、配偶者に全ての財産を残す方法はありますか?
A 夫婦に子供がいない場合で、親や祖父母も亡くなっている場合、「配偶者及び兄弟姉妹」が相続人となります。配偶者と暮らしてきた自宅についても、自分の死後、配偶者だけではなく、兄弟姉妹も相続する権利を得ます。こういった場合、配偶者に「全ての財産を相続させる」旨の遺言を残しておけば、全財産を相続させることが出来ます。兄弟姉妹には「遺留分」がないため、後から主張されることもありません。
Q 遺言はどうやって書けばいいの?
A 遺言は、法律上決められたルールに従い作成する必要があります。一般的には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つから選び、それぞれのルールに従い作成します。自筆証書遺言は、自分一人で書くことで作成出来ますが、専門家に相談せず自らの判断だけで書くと、せっかく遺言として相続人に残したものが、方式の不備により、効力が認められず、使えないものとなってしまうことがあります。
Q 自筆証書遺言ってどういうもの?
A その名の通り、自分で自筆で書いて作成する遺言のことです。いつでも自由に作成でき、証人も必要なく、費用もかかりません。但し、法律で決められた方式を備えていないと、その効力が認められません。基本的には4つのルールがあります。1.全部を自筆で書く、2.作成した日付を書く、3.署名をする、4.印を押すの4つです。一番手軽に作成できる反面、一番不備が多いのも自筆証書遺言です。4つのルールの他、記載する文面によっても効力が異なるため、注意が必要です。
Q 公正証書遺言と秘密証書遺言ってどんなもの?
A 公正証書遺言は、公証人と証人二人の面前にて、遺言を口述した上で作成する遺言です。作成する前に公証人に遺言の内容を確認してもらうため、法律知識があまりない人でも、必要なアドバイスを受けられることがあります。また、公証役場に遺言書が保管されるため、紛失の心配もなくなります。
秘密証書遺言は、自分で作った遺言を公証役場に持って行き、公証人及び証人二人の立会のもとで封をして作成します。誰にも内容を知られずに作成できますが、自筆証書遺言と同様、内容に不備があると、遺言の内容が実現しないことがあります。また、遺言の保管は自分でしなければなりません。
Q 遺言書はどこに保管すればいいの?
A せっかく作った遺言も、引っ越しの際に紛失してしまう場合や、火事で消失してしまう場合もあります。また、自分しか分からない場所に保管していると、自分の死後、誰にも発見されない可能性があります。一方、容易に発見できる場所に保管していると、変造や隠匿をされる危険が生じます。これを防ぐために、遺言執行者に保管してもらうという方法があります。また、公正証書遺言により作成すれば、公証役場に保管されます。
Q 一度した遺言は取り消せないの?
A 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、一部又は全部の遺言を取り消すことができます。遺言の撤回には、法律上いくつかのルールが定められています。前に書いた遺言と抵触する遺言を作成すれば、抵触する部分についてのみ、前の遺言を撤回したものとみなされます。
また遺言に書いた財産を、事前に売却等により処分した場合には、その部分について遺言を撤回したものとみなされます。また、遺言書自体を故意に破棄したとき、遺言に書いた財産を故意に破棄したときも、その部分について遺言を撤回したものとみなされます。
Q 遺言によってどんなことが決められるの?
A 遺言に書く内容は自由ですが、法的効果を生じるものは、法律で決められています。例えば、 相続分の指定又は指定の委託、遺産分割方法の指定又は指定の委託、特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨、遺贈、寄附行為、信託の設定などです。以上のような財産に関することに加え、子の認知、未成年後見人、未成年後見監督人の指定等をすることもできます。また、遺言執行者の指定は遺言でしか行うことが出来ません。
Q 遺言を発見したけど、すぐに開封していいの?
A 公正証書遺言を除き、相続開始後、遺言は家庭裁判所において検認の手続きを経なければなりません。検認の手続きをしなくても遺言が無効となるわけではありませんが、過料による罰則があります。
また、封印のある遺言は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会の下で開封されなければなりません。こちらも同じように勝手に開封したからといって遺言が無効となるわけではありませんが、過料による罰則があります。また、検認、開封の手続きを怠っただけでなく、積極的に遺言を隠匿した場合には、相続欠格により相続権が失われる可能性があります。
Q 遺言が2通見かりました。どちらが有効?
A 遺言は、遺言によって全部または一部を取り消すことができます。複数の遺言がある場合、最後に書いた遺言が効力を生じることになります。一部のみの内容が抵触していた場合は、抵触していない内容については、先に書かれた遺言も有効です。こういった場合、先に書いた遺言が公正証書遺言で、後に書いた遺言が自筆証書遺言であったとしても、先に書いた遺言の内容を全て撤回していれば、効力を生じるのは後に書いた自筆証書遺言となります。
Q 父の遺言に、母に自宅を相続させるとあるのですが、母は父よりも先に他界してます。
この場合遺言の効力はどうなるの?
A 母親が相続するはずだった財産については、遺言の効力は生じません。その場合、相続するはずだった財産は、全て未分割の相続財産となり、法定相続人の共有となります。誰が取得するかは遺産分割協議により決めることになります。遺言全てが無効になるわけではないので、その他の部分については有効です。